【臨床心理士による里親ブログ⑤】子どもが安心して過ごすための3つのプロセス(お試し行動など)

心理系コラム

このブログでは、里親にも登録している臨床心理士が子どもの心について分かりやすくお伝えしています。

親や、きょうだい等の家族と離れて過ごす子どもたちはどのような心の状態になりやすいのでしょうか。少し考えてみるだけでも、不安、寂しさ、孤独などの感情が出てくることは容易に想像できるでしょう。

里子が里親家庭で安心して暮らせるようになるには、3つの過程を経ると言われています。これは里子だけでなく、養護施設で暮らす子どもも同様。いや、環境が大きく変わったり、不安が大きくなった子どもたちには共通して言えることなのかも知れません

例えば、
・進学、転校、転園などで、学校や保育園が変わる
・結婚、離婚、別離などで生活環境が変わる
・弟や妹が誕生したことで、生活スタイルが変わる  など

このように挙げてみると、当てはまる方は多いのではないでしょうか。そういった変化が起こる際、未熟な子どもたちには様々な行動が見られます。

里親に興味のある方、子どもの行動を理解したい全ての方に読んでもらえる内容です。

*この記事ではこんなことが分かります!

里子が里親家庭に慣れるためには見せかけの時期、試し行動を経て信頼関係へと繋がります。試し行動には色んなパターンがあり、ひとくくりに「ワガママ」と判断せず、子どもの一つ一つの行動を大切に付き合っていくことが必要です。

里親と里子の関係では、見せかけの時期→試し行動→信頼関係へと繋がる

里親家庭で里子を養育する際、以下の3つの過程を経ると言われています。

見せかけの時期:とても「いい子」に振る舞い、大人や周りに気に入られようとすることが多いです。

試し行動:自分を受け入れてくれるかどうか里親を試す行為です。

信頼関係:①、②を経て、里子と里親の信頼関係に繋がります。

庄司順一先生(2006)による研究では,里親家庭の適応のプロセスを 4 段階(緊張と不安の時期,一応の安心感が 獲得される時期,愛情の確認の時期,家族としての安定した関係が成立する時期)に区分されています。今回の記事では、初学者向けに分かりやすいよう3つの区分としました。

見せかけの時期

見せかけの時期には、子どもたちはとても良い子に振る舞います。この時期には、不安や緊張も強く、自分らしい振る舞いをすることが出来ないことが多いです。大人や周りの顔色をうかがって過ごします。言わば”様子見している”状況でしょう。

子どもは大人のことを本当によく見ています。大人の口調ややっていることを真似したりできるのも、よく観察しているからだと言えます。

環境が変わった子どもはより一層状況把握に努めています。理解がある子どもだと、周りに合わせようとすることも多いです。そのため、一見「いい子」に見えることが多いです。しかし、本心は違うかも知れないことを理解しておく必要があります。

試し行動

里親さんのブログでよく話題になるワードです。試し行動とは、自分を受け入れてもらえるのかを試す行動で、大人を困らせることがよくあります。困った行動を起こすことで、周囲の関心を引こうとしたり、受け入れてもらえるのか確認したりします。

例えば、
・過食、偏食、拒食

・赤ちゃん返りする

・嫌がる事をする などなど

こちらの記事でも試し行動の体験談が書かれています。

試し行動についての体験談や対処法紹介|里親なら誰もが通る道を乗り越えよう
里親が誰もが直面する試し行動の乗り切り方を体験談を元にご紹介

「試し行動」は上げるとキリがないくらい沢山あります。「赤ちゃん返り」は弟や妹が生まれた上の子供に見られる行動で、よく知られています。それも環境や生活スタイルの変化で上の子自身が「自分のことも大事にしてくれるのか?」と試している行動です。今まで出来ていたことが出来なくなったり、ご飯や着替えを手伝って欲しいと言ってみたりします。きちんと付き合ってあげることで、「自分自身も大事にしてもらっている」という気持ちをもち、弟や妹と新しい関係を築いていくことに繋がります。

里子の中には、学齢期でも「赤ちゃん返り」になるような子もいます。そして里親経験者では「試し行動に苦労した」という意見が多く聞かれます。

対応としては「ワガママ」として処理しないことです。試し行動であると理解し、とことん付き合う姿勢が必要です。しかし、試し行動が多過ぎたり、期間が長すぎたりして、里子に対して否定的な感情を抱いてしまう里親さんもいます。里親自身も子育てが初めてだったり、子どもを育てる環境に不慣れだったり、色んな要因が考えられます。

児童養護施設での「試し行動」についてはこちらの動画も参考になります。

大切なのは、自分の気持ちをきちんと受け止め、1人で抱えないこと。その中で家族や支援者に相談してみることも良いです。里親ブログを見ていると、「里子が可愛く思えない」「こんなことをされた」などネガティブな投稿も散見されます。そこから里親への非難や、里子への非難に繋がることが懸念されます。この世の中全てのことについて、「誰かのせい」と理由を一つに決めることはほとんど不可能です。色んな要因を踏まえつつ、里親自身の気持ちはきちんと受け止め、里子との関わりを考えていくことです。

子育てをしている親御さんも同じです。「子どもに腹が立つ」「こんな風に思ってしまって、情けない、申し訳ない」では何も解決しません。自分自身の気持ちはそれとして認め、それじゃあどうしたら良いかを考えてみる、それが前に進む一歩だと思います。

信頼関係

里子と里親の関係では、①見せかけの時期→②試し行動→③信頼関係の構築へと進んでいくとされています。

私の見解としては、①→②→③と順番通りにスムーズに進むわけではなく、①と②を繰り返してみる中で少しずつ関係性が出来てくると考えます。「信頼関係が出来てきたな」と思ったら、また「関係を試してみたくなる」と言ったことが出てくるのです。対人関係では、「信頼関係が成立した!」とそこで終わるものではありません。関係性とは、そういった行きつ戻りつを繰り返しながら、深まっていくものだと思います。

廣瀬あや先生(2011)の研究では、③信頼関係が得られるまで約1年は必要であるとされています。それだけ時間とエネルギーが必要な作業であることを心に留めておくと良いです。

<参考文献>
・廣瀬あや(2011)「里親の養育態度が里子の生活に対する充実感や自己受容,いらだち等に与える影響」,家族心理学研究 第 25 巻 第 2 号
・庄司順一(2006)「里親とのきずな」,そだちの科学

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